の発明家に重賞を与えるとともに、その発明を保護したものに対しては勲章を賜わるようお願いする。現在では勲章は主として官吏に年功によって授けられる。自由主義時代ならば、国家の統制下にある官吏が特別の恩賞に浴するのは当然であろうが、統制時代には、真に国家に積極的な功績のあったものに、職域等にこだわらず、公正に恩賞を賜わることが肝要である。発明の価値によっては、その保護者に授爵も奏請すべきである。更に一代の内に儲けた財産に対しては極めて高い相続税を課する等の方法を講じたならば、成金は自分の儲けた全部を発明奨励に出すことになるだろう。自分の力によって儲けた富を最終戦争準備の発明奨励に捧げることは、昭和時代の成金の名誉であり、誇りでなければならぬ。
成功の確実な見込がついた発明は、これを国家の研究機関で総合的学術の力によって速やかに工業化する。大研究機関の新設は固より必要であるが、全日本の研究機関を、形式的でなく有機的に統一し、その全能力を自主積極的に発揮させるべきである。
最終戦争のためには、どれだけの地域をわが協同範囲としなければならないかは一大問題である。作戦上及び資源関係よりすれば、なるべく広い範囲が希望されるのであるが、同時に戦争と建設とはなかなか両立し難く、大建設のためにはなるべく長い平和が希望される。徒らに範囲拡大のために力を消耗することは、慎重に考えねばならぬ。このことについても持久戦争時代と異なり、決戦戦争に徹底する最終戦争に於ては、必ずしも広い地域を作戦上絶対的に必要とはしないのである。優秀な武力が一挙に決戦を行ない得るからである。
以上の如く、われらが最終戦争に勝つための客観的条件は固より楽観すべきではないが、われらの全能力を総合運用すれば、断じて可能である。そしてこの超人的事業を可能にするものは、国民の信仰である。八紘一宇の大理想達成に対する国民不動の信仰が、いかなる困難をも必ず克服する。苦境のどん底に落ちこんでも泰然、敢然と邁進する原動力は、この信仰により常に光明と安心とを与えられるからである。日本国体の霊力が、あらゆる不足を補って、最終戦争に必勝せしめる。
第十四問 最終戦争の必然性を宗教的に説明されているが、科学的に説明されない限り現代人には了解できない。
答 この種の質問を度々受けるのは、私の実は甚だ意外とするところである。私は日蓮聖人
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