来ると、子供の言ったことやしたことを報告した。
「あれもお婆さんは嫌いなんだけれどしかたがないんだ。」笹村は打ち消した。
お銀が琵琶《びわ》の葉影の蒼々した部屋で、呻吟《うめ》き苦しんでいると、正一はその側へ行って、母親の手につかまった。その日お銀は朝から少しずつ産気づいて来た。昼ごろには時をおいては来る痛みが一層間近になって来た。
「さあ私もう出ます。」
お銀は昼飯のお菜拵《かずこしら》えなどをしてから、草履をはいて、産室の方へ出向いて行ったが、笹村はさほど気にもかけずにいた。二人はそのころ、不快な顔を背向《そむ》け合っているようなことが幾日も続いていた。
「あなたも来ていて下さいよ。」
お銀は出がけに笹村に言った。
「みんないるからいいじゃないか。」
笹村は呟《つぶや》いたが、やはり見に行かないわけには行かなかった。
外には真夏の目眩《まぶ》しい日が照っていたが、木蔭の多い家のなかは涼しい風が吹き通った。
「くるちい?」
子供は母親の顔を顰《しか》めて、いきむたんびに傍へ寄り添って、大人がするように自分の小さい手をかしてやった。そして手※[#「巾+白」、第4水準2−8−83、250−上−12]《ハンケチ》で玉のようににじみ出る鼻や額の汗を拭いた。
「おお、何てお悧巧《りこう》さんでしょう。自分もこうして阿母さんを苦しめた時もあったのにね。」
産婆は泣くような声を出した。
五十三
産れた女の児《こ》が、少しずつ皮膚の色が剥《は》げて白くなって来るまでには大分間があった。くしゃくしゃした目鼻立ちも容易に調《ととの》って来なかった。笹村は見向きもしなかったが、乳房を哺《ふく》ませているお銀の様子には、前の時よりも母親らしい優しみが加わって来た。
産婆は毎日来ては、湯をつかわせた。笹村も産児がどういう風に変化して行くかを見に行ったが、子供の顔は相変らず顰《しが》んでいた。
「何だいこれは……。」
笹村はお七夜の時、産婆の手で白粉や紅をつけられて、目眩しそうな目を細めに開いている赤子を眺めて笑い出した。
お銀も褥《とこ》のうえに起きあがって、蠢動《うごめ》く産児を見てにっこりしていた。
「いいですよ。こんな児がかえってよくなるものですよ。」
お銀は自信がありそうに言った。
老人のような皺《しわ》を目のあたりによせて、赤子は泣面《べそ
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