ど》かすんだよ。私なんざ慣れッっこで平気なものさ。」と、お袋はしばらくぶりで帰って来た爺さんと、酒を飲みながらお庄に言った。
「こんなことは、四ツ谷なぞへ行って、あまり弁《しゃべ》っちゃいけないよ。」お袋はこう言ってお庄に口留めをした。
芳太郎も酔いがさめると、早くから奥へ引っ込んで寝てしまった。
八十一
爺さんが来て、また帳場に頑張ることになってから、芳太郎はしばらく四ツ谷の媒介人《なこうど》の家に預けられた。
その話が決まるまでには、お庄も媒介人《なこうど》から事をわけていろいろに言って聴かされた。火災保険の重立《おもだ》ちの役員であった媒介人《なこうど》の中村の言うことには、お袋などの所思《おもわく》とはまた違ったところもあった。中村は爺さんやお袋やお庄の顔を揃《そろ》えている折にも、自分の考えを述べて、爺さんと反《そ》りの合わない芳太郎を、お庄と一緒に一時自分の家へ引き取ることに話を纏《まと》めた。
忙しい時は、ちょいちょい手伝いに来るという約束で、お庄が中村の家へ移って行ったのは、病気で困りきっていた金助町の叔父が、ちょうど上野から田舎へ立った日の夕方で
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