お》いのするのも胸につかえるようであった。お庄は明け方までおちおち眠ることが出来なかった。
芳太郎の口から聞かされる家の様子の、お袋の話と違ったところのあることが、じきにお庄にも感づけた。盃をする間際《まぎわ》に、近所の飲み屋で酒を呷《あお》っていたのも、衆《みんな》が揶揄《からか》っていたように、きまりの悪いせいばかりとも思えなかった。芳太郎の父親が死んでから、父親の生きているうちに外妾《めかけ》から後妻に直ったお袋が、引っ張り込んで来た今の親父を、始終不快に思っている芳太郎の心持も呑み込めた。親父には、牛込にいる女房も子もあった。実の父親が逐《お》い出した芳太郎の母親は、長いあいだ田舎の方を流れ歩いて、今は消息も絶えていた。
「お前も、あの親父にいびられることくらいは覚悟していなくちゃ駄目だよ。」少し口がほぐれてきた時分に、芳太郎はそう言って狎《な》れ狎《な》れしげに、酒くさい息を吐《ふ》きかけた。
お庄はそんなことを憶い出しながら急いで床を離れると、屏風の外で着物を着換えて部屋を出た。
橋廊下から母屋《もや》の方の台所へ出て行くと、年増《としま》のと少《わか》いのと、女中が
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