に入らなかった。
「あなたになぞ係り合っていませんよ。」と、お庄は終《しま》いに磯野の方へ向いて、
「磯野さん、ちょっとそこまで私と一緒に来て頂戴。」
「お気の毒ですが行きゃしませんよ。磯野は私の良人《おっと》です。」
お庄は糺や友達に呼び出されて、そのまま引き取った。田舎から出て来た芳村は、上野へ着くとすぐその足でお庄の家へやって来た。友達からの報知《しらせ》を受け取った時、芳村は何のこととも想像がつかなかったが、すぐ宿へ乗り込むのは不得策だということだけは、電文にも書き入れてあった。
一同《みんな》から事情を聞いてから、芳村は自分の宿へ帰って行った。
六十六
その晩芳村は行ききりであったが、お増と綺麗に手を切ったことは、翌朝芳村が友達のところへやって来てから、やっと解った。そのことを話しに二人はお庄のところへもやって来た。
芳村は旅の疲労《つかれ》やら、昨夜《ゆうべ》の騒ぎやらでめっきり顔に窶《やつ》れが見えた。今朝友達の宿で飲んだ酒の気もまだ残っていた。
「それにしても可哀そうな女です。彼《あれ》自身も思い設けない結果になってしまって――。」と、芳村はまだ女
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