、三度の食事を切り詰めても、傍に女がいなくては、一日も本を読んでいられないということを、お庄はお増から聞いて知っていた。
口を窄《つぼ》めて火を吹いている、生《は》え際《ぎわ》の詰ったお増の老《ふ》けた顔を横から眺めながら、お庄は毎日弁当を持って図書館へ通っていた芳村の低い音声や、物優しい蒼い顔を想い出していた。脚気《かっけ》で悩んでいる時も、お増は男を低い自分の肩に寄りかからせながら、それでも図書館通いを続けさせていた。
六十四
三人で安火に当っているうちに、磯野は腹が痛むと言い出して、そこへ突っ伏した。お増は押入れから自分の着物を出して来て、背《せなか》へ被《か》けたり、火鉢の抽斗《ひきだし》から売薬を捜して飲ませたりしたが、磯野の腹痛は止まなかった。
「いけないわね。」と、お増は独りで気を揉《も》みながら、枕など持ち出して来て、
「気味が悪いでしょうけれども、少しそこにお寝《よ》っていらっしゃいよ。」
「あまり晩《おそ》くならないうちに、お庄ちゃんは一足先へお帰り。叔父さんが心配するといけませんよ。」と、大分経ってから、安火に逆上《のぼ》せたような赫《あか》い顔
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