丈夫だよ。どうしているかちょっと訊いて見るだけだ。」磯野はお庄を宥《なだ》めておいてまた手紙を書きはじめる。
 半分ほど書くと、お庄はまたべったり墨を塗った。
 女は手紙で呼び出されて、それから三度ばかり遊びに来た。二度目には自家《うち》で拵えた紙入れなどをお庄へ土産《みやげ》に持って来てくれて、二階で二、三時間ばかり遊んで帰って行った。女の父親は袋物の職人で、家は新右衛門町の裏店《うらだな》にあった。磯野の郷里の町へ旅芸者に出ていた時分からの馴染《なじ》みで、土地でしばらく一緒に暮したこともある。女は亡くなった磯野の父親の気に入りで、町でも評判のよい素人くさい芸者であった。
 磯野はその女を一、二度引っ張りまわすと、またふっつりと忘れてしまった。
 亡くなった叔母の弟が田舎へ帰省するときお庄はその男と約束しておいて、自分で路費を少しばかり拵えて、叔父にも母親にも秘《かく》して、磯野の田舎へ遊びに行った。叔父は海辺から帰って、また家にぶらぶらしていた。病気が快くなったとも思えなかったが、いくらか肉づきもよくなっていたし、色沢《いろつや》も出て元気づいていた。叔父は自分では肺尖加答児《は
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