へ行くことになった。磯野が兄の取引き先から二十円三十円と時借りをした金の額の少くないことが、その時すっかり解った。お庄のところへ来たてに磯野はそんな金で、軟かい着物を拵えたり、持物を買ったりして景気づいていたが、湯島|界隈《かいわい》の料理屋にもちょいちょい昵近《ちかづき》の女があった。お庄と一緒に歩いている時、磯野は途《みち》で知った女に逢うと、こっちから声をかけて、お庄をそっち退《の》けに、片蔭でひそひそ話をすることがたびたびあった。
「あれには僕が少し義理の悪い借金もある。いつか芸者の祝儀を立て替えさしてそれッ放しさ。」と、磯野は何か思い出したような顔をして、またお庄と一緒に歩いた。
 磯野がいろいろの女を知っていることが、お庄にも解って来た。
 部屋で机のなかから写真を出して見ていると、磯野は手切れまで取られて別れた一年前の女をまた憶い出した。そしてお庄の見ている傍で急に思い着いて手紙を書きはじめた。
「厭な人ね。」と、お庄は机の端に両肱《りょうひじ》をついて目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》っていたが、いきなり手を伸ばして巻紙を引っ褫《たく》った。
「何大
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