「どうしたというんだろう。」と、母親は会社の紛擾《ごたごた》から引き続いて、心配事ばかり多い弟の体を気遣った。
「なあに感冒《かぜ》だ。ヘブリンの一服も飲めば癒《なお》るで。」叔父はそう言いながら、繁三を相手に酒を飲んで芝居の話などしていた。
 お照がしばらくここの家に隠れていた。あっちの家を引き払うころから、お照のことで、叔父と丸山とは互いに気持を悪くしていたが、ここへ引っ越してからも、あまり往来《ゆきき》をしなかった。丸山が女を捜しに来ると、女は二階へあがって客の部屋に隠れていた。丸山は終《しま》いに女をかまいつけなくなった。
 病院以来懇意になった糺の友達の医師《いしゃ》が、その晩もぶらりと遊びに来て、叔父と碁を打ちはじめた。叔父は一勝負やっと済ますと、碁盤を押しやって顔を顰《しか》めた。石持っている間も時々|顫《ふる》えていた。
「おかしいな。」と、医師《いしゃ》は繁三に糺の聴診器を取り寄せさして、叔父の体を見た。
 医師は骨立った叔父の胸をそっちこっち当って見ているうちに、急に首を捻《ひね》って肺のところをとんとんと強く敲《たた》きはじめた。
「どうも少しおかしい。」医師は
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