「何だか、私も知らないんですがね、私ゃとても、東京で堅気の奉公なんざ出来やしませんから……。」
「それじゃ千葉の方は、お茶屋ででもあるのかね。」
お国は黙っている。新吉も黙って見ていた。
「私の体なんか、どこへどう流れてどうなるか解りゃしませんよ。一つ体を沈めてしまう気になれア、気楽なもんでさ。」とお国は投げ出すように言い出した。
「だけど、何も、それほどまでにせんでも……。」と新吉はオドついたような調子で、「そう棄て鉢になることもねえわけだがね。」と同じようなことを繰り返した。
「それア、私だって、何も自分で棄て鉢になりたかないんですわ。だけど、どういうもんだか、私アそうなるんですのさ。小野と一緒になる時なぞも、もうちゃんと締るつもりで……。」とお国は口の中で何やら言っていたが、急に溜息を吐《つ》いて、「真実《ほんとう》にうっちゃっておいて下さいよ。小野のところから訊いて来たら、どこへ行ったか解らない、とそう言ってやって下さい。この先はどうなるんだか、私にも解らないんですから。」
「じゃ、マア、行くんなら行くとして、今夜に限ったこともあるまい。」
店がにわかにドヤドヤして来た。
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