絶望
徳田秋聲
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)何處《どこ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)或|寄席《よせ》の前の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)騷※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]る
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)オイ/\
−−
『オイ/\何處《どこ》へ行くんだよ。』
とお大《だい》と云ふ裏町のお師匠さんが、柳町《やなぎちやう》の或|寄席《よせ》の前の汚《きたな》い床屋から往來へ聲をかける。
聲をかけられたのは、三|人連《にんづれ》の女である。孰《いづれ》も縞《しま》か無地《むぢ》かの吾妻《アヅマコート》に、紺か澁蛇《しぶじや》の目《め》かの傘を翳《さ》して、飾《めか》し込んでゐるが、聲には氣もつかず、何やら笑ひさゞめきながら通過ぎやうとする。
『オイ/\、素通《すどほり》は不可《いけな》いよ。』とお大は一段聲を張あげて憤《じ》れつたさうに、
『此《こゝ》にお大さん
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