つて來て、火を點《つ》けたが、もう何をする勇氣もなく、取放《とりツぱな》しの蒲團の上に、疲れた重い體をヅシンと投出したと思ふと、憤《じ》れつたさうに泣いて居た。
 三毛は暫く其處らをウソ/\彷徨《さまよ》うてゐたが、旋《やが》て絶望したのか、降連《ふりしき》る雨のなかを、悲しげな泣聲が次第に遠くへ消えて行つた。



底本:「明治文學全集68 徳田秋聲集」筑摩書房
   1971(昭和46)年
入力:網迫
校正:渡瀬淳志
1999年2月12日公開
2006年1月6日修正
青空文庫作成ファイル:
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