。芸者の痩《や》せ腕で男の難儀を救う、そんな無理なことは言わないが、お前はんにできることだったら、してあげたらどうだろう。なるほど晴子という女は、芸者にしては見所《みどころ》がある、心掛けのいい奴だと、あの人が感心するようだったら、そこは若ーさんも肚《はら》のすわった男だから、この先きお前はんのためにも悪いはずはないにきまっている。」
「どうすればいいんです。」
 銀子が訊《き》くと、何のことはない。それはお神の鼻元思案で、銀子が今までにしてもらったダイヤの指環《ゆびわ》に、古渡珊瑚《こわたりさんご》や翡翠《ひすい》の帯留、根掛け、櫛《くし》、笄《こうがい》、腕時計といった小物を一切くるめて返すようにと言うので、銀子はせっかく貰《もら》ったものを取りあげられるのが惜しく、不服だったが色に見せず、急いで家《うち》に帰り、片手ではちょっと持てないくらいの包みにして、持って来た。お神はそれを受け取り、さも自分の指図《さしず》に出たことだと言わぬばかりに、若林の前へ持ち出した。
 若林は「ふむ」と顔を背向《そむ》けていたが、女にくれてやったものまで取り返すほど行き詰まっているわけでもなく、一旦
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