彼女は鏡に映る銀子の顔をちらと覗《のぞ》きながら、そっと訊《き》くのだった。
「どうしてです。」
 銀子は反問した。
「何だか変ですよ。私この間から気になって、聞こう聞こうと思っていたんだけれど、貴女《あんた》の年頃にはとかく気が迷うもんですからね。ひょっとしたら、今の家《うち》に居辛《いづら》くて、住替えでもしたいんじゃないんですか。」
「別にそういうこともないんですけれど。」
「それなら結構ですがね。住替えもいいけれど、借金が殖《ふ》えるばかりだから、まあなるべくなら辛抱した方がよござんすよ。」
「そうだわね。」
「それとも何か岡惚《おかぼ》れでも出来たというわけですかね。」
「あらお師匠さん、飛んでもない。」
「それにしても何だか変ですよ、もしかして人にも言えない心配事でもあるんだったら、私いいこと教えてあげますよ。」
「どんなことですの。」
「日比谷《ひびや》に桜田|赤龍子《せきりゅうし》という、人相の名人があるんですがね、実によく中《あた》りますよ。何しろぴたりと前へ坐ったばかりで、その人の運勢がすっかりわかるんですからね。その代り見料は少し高《たこ》ござんすよ。」
「そう
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