仕事に坐ることもできた。上の妹は小山で当分寝泊りすることになり、小さい方の妹たちは磯貝の勧めで、学校から帰ると踊りの稽古《けいこ》に通わせ、銀子が地をひいて浚《さら》ったりしていた。
 ある日の午後も、銀子は椿姫《つばきひめ》の映画を見て、強い感動を受け、目も眩《くら》むような豪華なフランスの歌姫の生活にも驚いたが、不幸な恋愛と哀れな末路の悲劇にも泣かされた。彼女は「クレオパトラとアントニイ」や「サロメ」など、新しい洋画を欠かさず見ていたが、弁士にもお座敷での顔馴染《かおなじみ》があり、案内女にも顔を知られて、お座敷がかかれば、そっと座席へ知らせに来てもくれた。
 そのころ銀子は二度ばかり呼ばれた東京の紳士があり、これが昔しなら顔も拝めない家柄だったが、夫人が胸の病気で海岸へ来ているので、時々洋楽の新譜のレコオドなど買い入れて持って来るのだったが、銀子の初々《ういうい》しさに心を惹《ひ》かれ、身のうえなど聞いたりするのだった。
「事によったら僕が面倒見てあげてもいいんだがね、この土地としては君の着附けは大変いいようじゃないか、何かいいパトロンがついているんだろう。」
 彼は思わせぶりに
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