花が咲く
徳田秋声
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)白木蓮《しろもくれん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)今|憶《おも》ふと
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぶら/\
−−
磯村は朝おきると、荒れた庭をぶら/\歩いて、すぐ机の前へ来て坐つた。
庭には白木蓮《しろもくれん》が一杯に咲いてゐた。空からの白さで明るく透《す》けてゐるやうに思へた。花の咲く時分になつてから、陽気が又後戻りして来て、咲きさうにしてゐた花を暫し躊躇《ちうちよ》させてゐたが、一両日の生温《なまぬる》い暖かさで、それが一時に咲きそろつた。そしてその下の方に茂つてゐる大株の山吹が、二分どほり透明な黄色い莟《つぼみ》を綻《ほころ》ばせて、何となし晩春らしい気分をさへ醸《かも》してゐた。何かしら例年の陽気に見られない、寒さと暑さの混り合
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