《ねら》いをつけた異性へと飛びついて行くのであったが、やがて生活が彼女の思い昂《あが》った慾望に添わないことが苦痛になるか、または、もっと好きそうなものが身近かに目つかるかすると、抑えがたい慾望の※[「※」は「閻」の「門がまえ」の中の右側に「炎」、第3水準1−87−64、212−上−9]《ほのお》がさらに彼女を駆り立て、別の異性へと飛び蒐《かか》って行くのであったが、一つ一つの現実についてみれば、あまりにも神経質な彼女の気持に迫り来るようなものが、この狭い地上の生活環境のどこにも見出《みいだ》されようはずもないので、到《いた》るところ彼女の虹《にじ》のような希望は裏切られ、わがままな嘆きと悲しみが、美しい彼女の夢を微塵《みじん》に砕いてしまうのであった。しかし北の海の荒い陰鬱《いんうつ》さの美しい自然の霊を享《う》けて来た彼女の濃艶《のうえん》な肉体を流れているものは、いつも新しい情熱の血と生活への絶えざる憧《あこが》れであった。とかく生活と妥協しがたいもののように見える彼女の恋愛巡礼にも、あまりに神経的な打算があった。大抵彼女の産まれた北方には、詳しくいえばそれは何も北方に限ったこと
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