を貴方《あなた》に保証してもらえると大変いいんだが。」
 庸三はこの期《ご》になって、卑小にも春日の腹でも捜《さぐ》っているようで不愉快だったし、先生も汚いなと思われでもしているようで気が差したが、いざとなるとやはり金も惜しかった。
「さあ、僕にもわからないが、そんなことないでしょう。しかし言っときましょう。」
「いずれにしても金は明日お届けします。」
 庸三はその晩神山に送られて家《うち》へ帰って来たが、潮《しお》を見計らって庸三をさそい出した神山と小夜子の狂暴な恋愛も、ちょうどそのころが序曲であった。

 春日夫妻という牆壁《しょうへき》の後ろにある葉子を、覗《のぞ》き見ようとしていろいろに位置をかえて覗こうとするにも似た心持で、事務所で春日に金を渡して別れてから、幾日かたった。春日に金を渡すとき庸三は泣面《べそ》をかいていたが、しかしまた一面には今まで立ち迷っていた雲の割れ目から青い空が見えて来たような感じでもあった。
 すると一週間ばかり過ぎたある日の午後、庸三はまたしても葉子から電話で呼び出された。彼は心に空虚のできたこんな場合の例にもれず、葉子と切れてからしばしば近所の友人の家で遊んでいた。田舎《いなか》丸出しの女中たちの拵《こしら》えてくれる食膳《しょくぜん》に向かうことも憂鬱《ゆううつ》だったが、出癖もついていたせいで、独りで書斎にいると、四面|楚歌《そか》のなかで生きている張り合いもないような気もした。しかしまた人知れぬ反撥心《はんぱつしん》もあって、まだ全く絶望しているのではなく、今までの陰鬱な性格に変化が来るようにも思えた。本を読んでも、今までわからなかったことに新しい興味が出て来たり、熱に浮かされていた青年時代のそれと異《ちが》って、しっくり心と心と取り組めるような感じだった。新規|蒔直《まきなお》しには年を取りすぎた嘆きがあり、準備をするには何から手をつけていいか、今さら見当もつきかねるのだったが、何らかの補足はできそうに思えた。未練がましく生きる醜さにも想い到《いた》ったが、天才の真似《まね》をし損《そこな》いたくもなかった。そんな時生活の裕《ゆた》かな老友の書斎にいると、心境と環境がまるで異っているだけに、いくらか気分が落ちつくのだった。
「また何かあるよ。生活には困らないが、独りも寂しいといったような女も沢山いるよ。」
 友人は言うの
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