らで、島ちゃんの旦那は碌素法《ろくすっぽう》工場へ顔出しもしないで、そこへばかり入浸《いりびた》っていたんだって。それで、その手紙にこんな事まで書いてあるんだってさ。これも東京の人で、彼方《あちら》へ往く度《たんび》に札びら切って、大尽風をふかしているお爺さんが、鉱山《やま》が売れたら、その女を落籍《ひか》して東京へつれていくといっているから、それを踏台にして、東京へ出ましょうかって。ねえ、ちょいとお安くないじゃないの」
 姉は植源の嫁から聞いたと云うその女の噂を、こまごまと話して聞した。
「それに鶴さんは、着物や半衿《はんえり》や、香水なんか、ちょいちょい北海道《あちら》へ送るんだそうだよ。島ちゃん確《しっか》りしないと駄目だよ」姉はそうも言った。
「何《なあ》に」と思って、お島は聞いていたのであったが、女にどんな手があるか解らないような、恐怖《おそれ》と疑惧《ぎぐ》とを感じて来た。

     三十七

 植源の嫁のおゆうの部屋で、鶴さんと大喧嘩をした時のお島は、これまで遂《つい》ぞ見たこともないようなお盛装《めかし》をしていた。
 お島が鶴さんに無断で、その取つけの呉服屋から、成
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