な浴場へ案内されたりする度《たんび》に、一人客の寂しさが感ぜられた。
 浴場の窓からは、草の根から水のちびちびしみ出している赭土山《あかつちやま》が侘《わび》しげに見られ、檐端《のきば》はずれに枝を差交《さしかわ》している、山国らしい丈《たけ》のひょろ長い木の梢《こずえ》には、小禽《ことり》の声などが聞かれた。
「お一人でお寂しゅうございますでしょう」
 浴後の軽い疲をおぼえて、うっとりしているところへ、女がそう言いながら膳部《ぜんぶ》を運んで来た。
 笑い声などを立てたことのない、この二日ばかりの旅が、物悲しげに思いかえされた。どこの部屋からか蓄音器が高調子に聞えていた。
 電話室へ入って、東京の自宅《うち》の様子を聞くことのできたのは、それから大分たってからであった。小野田はまだ帰っていなかった。
「好いところだよ。旦那の留守に、お前さんも一日遊びに来たらいいだろう」
 お島は四五日の逗留《とうりゅう》に、金を少し取寄せる必要を感じていたので、その事を、留守を頼んでおいた若い職人に頼んでから、そう言って誘《いざな》った。
「それから順吉もつれて来て頂戴よ。あの子には散々《さんざ》苦
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