が買ってくれた草履をはいて、軽い打扮《いでたち》で汽車に乗ったのであったが、お島も絽縮緬《ろちりめん》の羽織などを着込んで、結立ての丸髷頭で来ていた。
 足音の騒々しい構内を、二人は控室を出たり入ったりして、発車時間を待っていたが、このステーションの気分に浸っていると、自然《ひとりで》に以前の自分の山の生活が想出せて来て、涙含《なみだぐ》ましいような気持になるのであった。
「どうでしょう。西洋人は活溌《かっぱつ》でいいね」
 日光へでも行くらしい、男女《おとこおんな》の外国人の綺麗《きれい》な姿が、彼等の前を横《よこぎ》って行ったとき、お島は男に別れる自分の寂しさを蹴散《けちら》すように、そう云って、嘆美の声を放った。
「どうだね、一緒に行かないか」
 浜屋は瀬戸物のような美しい皮膚に、この頃はいくらか日焦《ひやけ》がして、目の色も鋭くなっていたが、お島が暫くでも夫婦ものの旅行と見られるのが嬉しいような、目眩《まぶし》いような気持のするほど、それは様子が好かった。
 客車に乗ってからも、お島は窓の前に立って、元気よく話を交えていたが、そのうちに汽車がするする出て行った。
「そのうち景気
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