》は、誰の目にも立派な紳士に見えるのであった。小野田は切《きり》たての脊広《せびろ》などを着込んで、のっしりした態度を示していた。
 お島は自分の性得《しょうとく》から、N――市へ立つ前に、この男のことをその田舎では一廉《ひとかど》の財産家の息子ででもあるかのように、父や母の前に吹聴しずにはいられなかった。それで小野田もその意《つもり》で、母親に口を利いていた。
「この人の家は、それは大したもんです」
 お島は母親を威圧するように、今日も皆《みんな》が揃《そろ》っている前で言ったが、小野田はそれを裏切らないように、口裏を合せることを忘れなかった。
「いや私の家も、そう大した財産もありませんよ。しかしそう長く苦しむ必要もなかろうと思います。夫婦で信用さえ得れば、そのうちにはどうにかなるつもりでいますので」
 母親の安心と歓心を買うように、小野田は言った。
 お島はその傍に、長くじっとしていられなかった。自分を信用させようと骨を折っている、男の狡黠《わるごす》い態度も蔑視《さげす》まれたが、この男ばかりを信じているらしい、母親の水臭い心持も腹立しかった。
 嫂は、この四五年の良人《おっと》
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