出そう」
 その中の一人はそう言って、彼女を引立てるような意志をさえ漏した。
「そう一|時《とき》に出ましても、手前どもではまだ資本がございませんから」
 お島はその会社のものを、自分の口一つで一手に引受けることが何の雑作もなさそうに思えたが、引受けただけの仕事の材料の仕込にすら差閊《さしつか》えていることを考えずにはいられなかった。
 註文が出るに従って、材料の仕込に酷《ひどく》工面《くめん》をして追着《おっつ》かないような手づまりが、時々|好《い》い顧客《とくい》を逃したりした。
「ええ、可《よろ》しゅうございますとも、外《ほか》さまではございませんから」
 品物を納めに行ったとき、客から金の猶予を言出されると、お島は悪い顔もできずに、調子よく引受けたが、それを帰って、後の仕入の金を待設けている小野田に、報告するのが切《せつ》なかった。それでまた外の顧客先《とくいさき》へ廻って、懈《だる》い不安な時間を紛らせていなければならなかった。
「堅い人だがね、どうしてくれなかったろう」
 お島は小野田の失望したような顔を見るのが厭《いや》さに、小野田がいつか手本を示したように、私《そっ》と
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