宕下《あたごした》の方にいることを、思いだして、それに店の手入を頼んでから、郵便局に使われていた古いその家の店が、急に土間に床が拵《こしら》えられたり、天井に紙が張られたり、棚が作られたりした。一畳三十銭ばかりの安畳が、どこかの古道具屋から持運ばれたりした。
雨降がつづいて、木片《きぎれ》や鋸屑《おがくず》の散らかった土間のじめじめしているようなその店へ、二人は移りこんで行った。
陳列棚などに思わぬ金がかかって、店が全く洋服屋の体裁を具《そな》えるようになるまでに、昼間お島の帯のあいだに仕舞われてある財布が、二度も三度も空《から》になった。大工が道具箱を隅《すみ》の方に寄せて、帰って行ってから、お島はまたあわただしく箪笥の抽斗《ひきだし》から取出した着物の包をかかえて、裏から私《そっ》と出て行った。
外はもう年暮《としぐれ》の景色であった。赤い旗や紅提灯《べにぢょうちん》に景気をつけはじめた忙しい町のなかを、お島は込合う電車に乗って、伯母の近所の質屋の方へと心が急《せ》かれた。
六十七
ミシンや裁台《たちだい》などの据えつけに、それでも尚《なお》足りない分を、お島
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