連れて行こうという見脈《けんまく》だで……」
「ふむ」と、お島は蒼くなって、ぶるぶるするような声を出した。
「御父さんにここで逢うのは厭だな」お島は手を堅く組んで首を傾《かし》げていた。「どうかして逢わないで還す工夫はないでしょうか」
「でも、ここに居ることを打明けてしまったからね」
「ふむ……拙《まず》かったね」
「とにかく些《ちょっ》と逢った方がいいぜ。その上で、また善く相談してみたらどうだ」
「ふむ――」と、お島はやっぱり凄《すご》い顔をして、考えこんでいた。「東京を出るとき、私は一生親の家の厄介にはなりませんと、立派に言断《いいき》って来ましたからね。今逢うのは実に辛《つら》い!」
 お島の目には、ほろほろ涙が流れだして来た。
「為方がない、思断《おもいき》って逢いましょう」暫くしてからお島は言出した。「逢ったらどうにかなるでしょう」
 二人は藤棚の蔭を離れて、畔道《あぜみち》へ出て来た。

     五十八

 父親は奥へも通らず、大きい柱時計や体量器の据えつけてある上り口のところに、行儀よく居住《いずま》って、お島の小さい時分から覚えている持古しの火の用心で莨《たばこ》をふ
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