《さしず》をしたりしていた。町の旅籠《はたご》や料理屋へ肴《さかな》を仕送っている魚河岸《うおがし》の問屋の旦那が、仕切を取りに、東京からやって来て、二日も三日も、新建《しんだち》の奥座敷に飲つづけていた。
精米所の主人が建ててくれたと云う、その新座敷へ、お島も時々入って見た。糸柾《いとまさ》の檜《ひのき》の柱や、欄間《らんま》の彫刻や、極彩色の模様画のある大きな杉戸や、黒柿の床框《とこがまち》などの出来ばえを、上さんは自慢そうに、お島に話して聞せた。
河岸の旦那の芸づくしをやっているその部屋を、お島も物珍しそうに覗《のぞ》いてみた。それでも安お召などを引張った芸者や、古着か何かの友禅縮緬《ゆうぜんちりめん》の衣裳《いしょう》を来て、斑《まだ》らに白粉《おしろい》をぬった半玉《はんぎょく》などが、引断《ひっきり》なしに、部屋を出たり入ったりした。鼓や太鼓の音がのべつ陽気に聞えた。笛の巧いという、盲の男の師匠が、芸者に手をひかれて、廊下づたいに連れられて行った。
そこへ精米所の主人がやって来て、炉縁《ろばた》に胡坐《あぐら》をかくと、そこにごろりと寝転んでいたお爺さんは直《じき》に
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