で、産児の寺へ送られていったのは、その晩方であったが、思いがけなく体の軽くなったお島の床についていたのは、幾日でもなかった。
健康が回復して来ると同時に、母親と植源の隠居とのどうした談合《はなしあい》でか、当分植源にいっていることに決められたお島は、そこで台所に働いたり、冬物の針仕事に坐ったりしていた。ぐれ出した鶴さんは、口喧《くちやかま》しい隠居の頑張《がんば》っているこの閾《しきい》も高くなっていた。お島はおゆうの口から、下谷の女を家へ入れる入れぬで、苦労している彼の噂をおりおり聞されたりした。
「ああなってしまっちゃ、あの人ももう駄目よ」おゆうは鶴さんに愛相《あいそ》がつきたように言った。
四十一
一つは人に媚《こ》びるため、働かずにはいられないように癖つけられて来たお島は、一年|弱《たらず》の鶴さんとの夫婦暮しに嘗《な》めさせられた、甘いとも苦《にが》いとも解らないような苦しい生活の紛紜《いざこざ》から脱《のが》れて、何処《どこ》まで弾《はず》むか知れないような体を、ここでまた荒い仕事に働かせることのできるのが、寧《むし》ろその日その日の幸福であるらしく見えた
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