はまだ肩で息をしながら、やっぱり突伏していた。
「……お前のようなものに、勝手な真似《まね》をされたんじゃ、商人はとても立って行《ゆき》っこはありゃしないんだからね」鶴さんは、自分がこの家に対する責任や、家つきの前《せん》の内儀《かみ》さんに対する立場などを説立ててから言出した。
「そんな事は、おゆうさんにでも聞いてお貰《もら》いなさい」お島は憎さげに言《ことば》を返したまま、またくるりと後向になった。

     四十

 返したとも返ったとも決らずに、お島が時々|生家《さと》や植源の方へ往ったり来たりしていた頃には、鶴さんの家も大分ばたばたになりかけていた。
 北海道の女の方のそれはそれとして、以前から関係のあった下谷の女の方へ、一層熱中して来た鶴さんは、店のものの一人が所々の仕切先をごまかして、可也な穴を開けたことにすら気のつかぬほど、店を外にしていた。
「子供だけは私《あっし》が家において立派に育ててやるつもりです」
 鶴さんは、植源の隠居や嫁の前へ来ると、いつもお島の離縁話を持出しては、口癖のように言っていたが、お島に向ってもそれを明言した。
 植源の隠居に委《まか》してある
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