美術曲芸しん粉細工
阿部徳蔵

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【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ぎゆつ[#「ぎゆつ」に傍点]と

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)べた/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 しん粉細工に就いては、今更説明の必要もあるまい。たゞ、しん粉をねつて、それに着色をほどこし、花だの鳥だのゝ形を造るといふまでゞある。
 が、時には奇術師が、これを奇術に応用する場合がある。しかしその眼目とするところは、やはり、如何に手早く三味線に合せてしん粉でものゝ形を造り上げるかといふ点にある。だから、正しい意味では、しん粉細工応用の奇術ではなくて、奇術応用のしん粉細工といふべきであらう。
 さてそのやり方であるが、まづ術者は、十枚あるひは十数枚(この数まつたく任意)の、細長く切つた紙片を一枚づゝ観客に渡し、それへ好みの花の名を一つづゝ書いて貰ふ。書いてしまつたら、受けとる時にそこの文字が見えないために、ぎゆつ[#「ぎゆつ」に傍点]としごいて貰ふ。
 そこで術者は、客席へ出て花の名を書いた
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