」]、何か考えて居るようです。それから『昨夜大層珍らしい夢を見ました』と話しました。私共は、いつも御互に夢話を致しました。『どんな夢でしたか』と尋ねますと『大層遠い、遠い旅をしました。今ここにこうして煙草をふかしています。旅をしたのが本当ですか、夢の世の中』などと申して居るのです。『西洋でもない、日本でもない、珍らしいところでした』と云って、独りで面白がっていました。
 三人の子供達は、床につきます前に、必ず『パパ、グッドナイト、プレザント、ドリーム』と申します。パパは『ザ、セーム、トウ、ユー』又は日本語で『よき夢見ましょう』と申すのが例でした。
 この朝です、一雄が学校へ参ります前に、側に参りまして『グッド、モーニング』と申しますと、パパは『プレザント、ドリーム』と答えましたので、一雄もつい『ザ、セーム、トウ、ユー』と申したそうです。
 この日の午前十一時でした。廊下をあちこち散歩して居まして、書院の床に掛けてある絵をのぞいて見ました。これは『朝日』と申します題で、海岸の景色で、沢山の鳥が起きて飛んで行くところが描いてありまして夢のような絵でした。ヘルンは『美しい景色、私このようなと
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