一切離れて潔癖者のようでございました。
 私は部屋から庭から、綺麗に、毎日二度位も掃除せねば気のすまぬ性ですが、ヘルンはあのバタバタとはたく音が大嫌いで、『その掃除はあなたの病気です』といつも申しました。学校へ参ります日には、その留守中に綺麗に片付けて、掃除して置くのですが、在宅の日には朝起きまして、顔を洗い食事を致します間にちゃんとして置きました。この外掃除をさせて下さいと頼みます時には、ただ五分とか六分とか云う約束で、承知してくれるのです。その間、庭など散歩したり廊下をあちこち歩いたりしていました。
 交際を致しませぬのも、偏人のようであったのも、皆美しいとか面白いとか云う事を余り大切に致し過ぎる程に好みますからでした。このために、独りで泣いたり怒ったり喜んだりして全く気ちがいのようにも時々見えたのです。ただこんな想像の世界に住んで書くのが何よりの楽しみでした。そのために交際もしないで、一分の時間も惜んだのでした。『あなた、自分の部屋の中で、ただ読むと書くばかりです。少し外に自分の好きな遊びして下さい』『私の好きの遊び、あなたよく知る。ただ思う、と書くとです。書く仕事あれば、私疲れ
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