殺しようとした。權威ある故人をしてこれを語らしめよ。リッチー教授は言う。
「科學概念の變化に對する干渉は、人間の精神を重んずる人々によりて從來たえず行われた過失である。かかる干渉は常に當時勃興しつつあつた科學の爲に棄てられた中途半端な科學的學説の支持者の敗北に終つた。神學はガリレオに干渉したが、其干渉に依て何等得る所がなかつた。天文學、地質學、生物學、人類學、歴史學等は屡※[#「※」は二の字点、第3水準1−2−22、287−下−13]《しばしば》、物質的人間説を恐れている人々の心を震駭《しんがい》させた。彼等はダーウィン説とラマルク説の相違等をもつけの幸として新學説と戰おうとした。恰《あたか》も人類の精神的幸福が十七世紀若しくはそれ以前の科學的信仰と密接不離の關係があるかのように……」(Prof. Ritchie, Philosophical Studies)
 これは丁度マルキシズム、サンジカリズム、アナーキズム等に依て唯物史觀に對する解釋を異にしているどさくさ紛れに十八世紀乃至十七世紀の科學前派のヒューマニズムを持出して、鐵と石炭と電氣とに依て動かされている近世産業問題を解決させよ
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