藝術や文學の立場から絶叫したつて無益である。プロレタリアの解放、勝利ということが絶對だからである。
マルクス主義批評家にとつての作品評價の根本規準は、それ故に純然たる政治的規準である。マルクス主義作家及び批評家はまずこの規準を認めなければならない。彼がどんなにすぐれた批評家や作家であつても、この根本規準を拒絶する刹那に、彼はマルクス主義作家でも批評家でもなくなる。何となれば、彼は藝術家であり、批評家である以前にマルクス主義者でなければならぬからである。藝術的價値は、彼にとつては政治的必要に從屬せしめられねばならぬからである。
實際の作品、たとえばチェホフの作品を例にとろう。チェホフがすぐれた作家であつたことはほとんど異論のない事實である。だが彼の作品は、革命の擁護という政治的必要からは、好ましからぬ作品であるかも知れぬ。若しそうである場合には、彼の劇がマルクス主義批評家によつて手嚴しく批難され、その上演がプロレタリア國家權力によつて禁止されることはあり得る。そしてこの禁止は、政治的に全く正當である。だが、この政治的形勢の變化によりて、國家權力の命令や、政黨の決議によつて、チェホフの
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