品はプロレタリア的イデオロギイに貫かれている。だから、ダンテの作品は、藝術的にシンクレアの作品よりも劣つている!
もしダンテがあまり古すぎるなら、これをトルストイとおきかえても、ユゴオとおきかえても、ストリンドベルヒとおきかえてもよい。
然り! と或る人はこれに賛成して、答えるであろう。藝術作品の價値は、その作品のもつイデオロギイによつて決定される。プロレタリアの勝利のために利益をもたらすものにのみ藝術作品の價値がある!
否! とある人は答えるであろう。イデオロギイは藝術作品の全價値を決定する要素ではない。そしてプロレタリアの勝利のために、貢獻するということは、藝術本來の性質とは沒交渉である!
この二つの見方は、最近、マルクス主義文學理論と正統派文學理論とを尖鋭に對立させたのみでなく、マルクス主義文學理論の陣營内に於ても意見の分裂を生ぜしめている問題の焦點である。他の藝術の場合はしばらくおいて、文藝作品の評價の基準についての最近の諸議論は、悉くこの問題を中心としてまき起されているように思われる。
かような簡單な問題が、どうして、それ程多くの議論を生むに至つたかは、多くの人々に
前へ
次へ
全19ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
平林 初之輔 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング