政治的價値と藝術的價値 マルクス主義文學理論の再吟味
平林初之輔
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)首肯《しゆこう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ぶつかる[#「ぶつかる」は底本では「ぶつつかる」]
−−
一
コペルニクスは地動説をとなえたが、それを統一的理論によつて説明するためにはニュウトンをまたねばならなかつた。ところが今日の小學生は萬有引力の公式を知つている。だからコペルニクスよりも二十世紀の小學生の方がすぐれている!
石造建築は木造建築よりも進んだ建築である。某々洋食店は石造建築である。法隆寺は木造建築である。だから、某々洋食店の建築は法隆寺の建築よりもすぐれている!
これ等の論理には矛盾がない。だがこの理論からひき出された判斷は、必らずしも私たちを首肯《しゆこう》せしめない。その理由は説明するまでもなく、誰でもちよつと考えて見ればわかることである。
ところが、次のような命題にぶつつかると問題はそれ程簡單ではない。
ダンテの作品にはプロレタリア的イデオロギイが含まれていない。シンクレアの作
次へ
全19ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
平林 初之輔 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング