二人は感慨無量でしばらく無言のまま顔を見合わしていたが、やがて女の方が口をきった。
「わたし、貴方だとばっかり思ったものですから、心配で心配で……」
「僕はまた嘉《よし》ちゃんだとばかり思って心配していたんだ。ほんとに嘉ちゃんじゃなかったのだね?」
二人は光子の屍体を引きとることを即座に可決し、その足で光子の霊前にそなえるべく花を買いに行ったのであった。
底本:「殺意を運ぶ列車 鉄道ミステリー傑作選」光文社
1994(平成6)年12月20日初版1刷発行
1999(平成11)年1月10日7刷発行
初出:「新青年」
1927(昭和2)年1月号
入力:田中亨吾
校正:土屋隆
2001年12月31日公開
青空文庫作成ファイル:
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