ひとり》だ。お互に頑固に孤獨を守ツてゐるのだから、從《したが》ツてお互に冷《ひや》ツこい。いや、これも自然の結果なら仕方が無い。」
「何故《なぜ》お互に獨《ひとり》になツてゐなければならないのでせう。」
「色が違ふからさ。お前は紅《あか》い、俺は青い。」
「それぢや何方《どつち》がえらいのでせう。」
「そりや何方《どつち》だか解《わか》らんな。何方《どつち》でも自分の色の方にした方がえらいのだらう。」
「恰《まる》で喧嘩《けんくわ》をしてゐるやうなものですのね。」
「無論|然《さ》うさ、夫婦といふものは、喧嘩をしながら子供を作《こさ》へて行くといふに過ぎんものなんだ。」
「では私等《わたしたち》は何《ど》うしたのでせう、喧嘩はしますけれども、子供は出來ないぢやありませんか。」
「恐らく體力が平均しないからだらう。お前からいふと、俺《おれ》が虚弱《きよじやく》だからと謂《い》ひたからうが、俺からいふとお前が強壯《きやうさう》過《す》ぎると謂《い》ひたいね。併《しか》し他一倍《ひといちばい》喧嘩《けんくわ》をするから可《い》いぢやないか。夫婦の資格は充分だ………他人なら此樣《こん》なに衝突
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