も陰欝《いんうつ》なのも天性《てんせい》なら仕方がないぢやないか。人間の體質や性質といふものが、然《さ》うヲイソレと直されるものぢやない。俺《おれ》の虚弱なのと陰鬱なのとは性得《うまれつき》で、今更自分の力でも、また他《ひと》の力でも何《ど》うすることも出來やしない。例《たと》へばお前の頬《ほ》ツぺたの紅《あか》いを引《ひ》ツ剥《ぺ》がして、青くすることの出來ないやうな。」と細《こまか》に手先を顫《ふる》はせながら躍起《やつき》となツて叫ぶ。
「ま、貴方《あなた》も大概《たいがい》にしときなさいよ。私は貴方《あなた》の體の虚弱なことや氣難《きむづか》しいことを惡いとも何《な》んとも謂《い》ツたのぢやありません。ただ貴方《あなた》が家《うち》が淋しくツて不愉快だと仰有《おつしや》ツたから、それは誰の故《せい》でもない、貴方《あなた》御自身の體が惡いからと謂《い》ツたまでのことなんです。男らしくもない、弱い者いぢめも好《い》い加減《かげん》になさるものですよ。」とブツ/\いふ。其の態度が奈何《いか》にも冷《ひやゝか》で、謂《い》ふこともキチンと條理《でうり》が立ツてゐる。
俊男は其の怜《さ
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