」に傍点]なもので、敵が直ぐ頭の上に窺ツてゐるとも知らないで、ぴかり、ぴかり、體《からだ》を光らしながら、草の葉裏《はうら》で一生懸命に露を吸《す》ツてゐる。其處《そこ》のところを密《そつ》と赤手《すで》で捕《つかま》へて呉れる…… 暖い手で、握《にぎ》ツて遣《や》ツても、濟《すま》アして掌《てのひら》を這《は》ツてゐる奴《やつ》を螢籠の中へ入れる…… 恰ど獄屋《ひとや》へ抛込《ほうりこ》まれたやうなものだが、些《ちつ》ともそれには頓着しない。相變らずぴかり、ぴかり體《からだ》を光らしてゐる。それからまたふうわ、ふうわ飛んで來るのを眞《ま》ツ暗《くら》な中に待伏《まちぶせ》してゐて笹の葉か何んかで叩き落す。不意打を喰はせて俘《とりこ》にするのだが、後《あと》[#「後」は底本では「彼」]の連中は先へ來てゐる自分の仲間が此樣な災難に逢ツてゐるとは知らない。で、後《あと》から後から飛んで來るのを、片《かた》ツ端《ぱし》から叩落して、螢籠の中へ入れる。此の面白味忘れられぬから、螢狩は自分に取ツて、最も興味ある遊びの一つであツた。
興味があるから、つい家《うち》から遠く離れて、歸途《かへり》に
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