こ》だらう、何處へ來ちやツたんだらう。」
 固《もと》より星光《ほしあかり》だから能《よ》くは解《わか》らぬが、後《うしろ》の方へ振向いて見ても、矢張《やつぱり》黒い山影が見える。自分は愈々《いよ/\》弱ツて了《しま》ツた、先へ進むで可《い》いのか、後《あと》へ引返して可《い》いのか、それすら解《わか》らなくなツて了ツた。もう喚《わめ》いても泣いても追付《おつつ》きはしない。
 何處《どこ》かの森で梟《ふくろ》の啼いてゐる。それが谷間に反響して、恰どやまびこ[#「やまびこ」に傍点]のやうに聞《きこ》える。さて立ツてゐても爲方《しかた》が無いから、後《あと》へ引返す積りで、ぼつ[#「ぼつ」に傍点]/\歩《ある》き始めたが方角とても確《しか》と解ツてゐなかツた。其の氣の揉《も》めること情ないことゝ謂ツたら無い。
 薄氣味《うすぎみ》惡くはある、淋しくはある、足は疲《つか》れて來る、眠くはある。加之《それに》お腹《なか》まで空《す》いて來るといふのだから、それで自分が何樣なに困りきツたかといふ事が解《わか》る。何《ど》うかすると自分の履《は》いてゐる草履がペツタ/\いふのに、飛上るやうに吃驚
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