血迷《ちまよ》ツてゐるのだから、確《たしか》な事が考へられる筈が無い。自分は愈々《いよ/\》解らない道へ踏込むで了ツた。
「狐《きつね》に、魅《ばか》されたのぢやないか。」
と考へると、心細くなツて、泣出したくなる。徑《こみち》が恰ど蜘蛛《くも》の巣のやうになツてゐて、橋が妄《むやみ》とある土地だから、何んでも橋も渡り違へたのか、徑《こみち》を曲損《まがりそこ》ねたか、此の二つに違《ちがひ》なかツたのだが、其の時は然《さ》うは思はず、頭《あたま》から狐に魅《ばか》されたと思込むで了ツて、自分は氣を確《たしか》に持ツた積で、ただ無茶苦茶に歩《ある》いた。めくら滅法に先を急いだ。
 それでも時々、突《つ》ツ立《た》つては方角を考へ、目標《めじるし》を考へながら歩《ある》いたけれども、何うしても何時《いつ》も歸《かへ》る道とは違ツて居た。
 其のうちにだん/\と空が狹くなツて來て、左を向いても、右を向いて見ても、山の影が、黒くうぬ[#「うぬ」に傍点]/\としてゐる。自分は谷間《たにま》のやうな處を歩いてゐるやうになツた。それと氣が付くと、
「おや、おや、變な處へ來たぜ。此處《ここ》は何處《ど
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