水郷
三島霜川

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)水の郷《さと》と

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)螢|來《こ》い

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符二つ、1−8−75]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)のそり/\闇の中から
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 水の郷《さと》と謂《い》はれた位の土地であるから、實に川の多い村であツた。川と謂ツても、小川であツたが、自分の生れた村は、背戸《せど》と謂はず、横手と謂はず、縱《たて》に横に幾筋となく小川が流れてゐて、恰ど碁盤《ごばん》の目のやうになツてゐた。それに何《ど》の川の水も、奇麗に澄むでゐて、井戸の水のやうに冷《つめ》たかツた。川が多くツて、水が奇麗だ! それで、もう螢が多いといふ事が解る。螢は奇麗な水の精とも謂ツて可《よ》いのだから、自分の村には螢が澤山ゐた。何しろ六月から七月へかけて、螢の出る季節《とき》になると、自分の村は螢の光で明るい……だから、
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