ねえ。一體お前さん等ア今日に限ツて何んだツて其樣《そん》なに騷ぐんだ……人體解剖ツてものア其樣なふざけた[#「ふざけた」に傍点]譯のものぢや無からうぜ。いくら綺麗な娘だツて、屍體《しびと》が何んになるんだ……馬鹿々々しい!」と大聲に素《す》ツ破拔《ぱぬ》く。
是に反しては、各自《てんでん》に體面を傷ツけるやうなものだ。で何《いづ》れも熱《ほて》ツた頭へ水を打決《ぶツか》けられたやうな心地《こゝち》で、一人去り二人去り、一と先づ其處を解散とした。中には撲《なぐ》れと叫ぶ者も無いでは無かツたが、議案は遂に成立しなかツた。取分け酷目《みじめ》な目に逢はされたのは、先頭第一に解剖室へ跳込《をどりこ》むでそして打倒《ぶツたふ》れた學生で。これが一平に出口を塞がれて了ツて。まご/\してゐるうちに、遂々《とう/\》一平に襟首《えりくび》を引ツ攫《つか》まれて、
「さ、出るんだ、出るんだ。」と顎《あご》でしやくられ[#「しやくられ」に傍点]、そして小突※[#「廻」の正字、第4水準2−12−11、224−中段24]《こづきまは》すやうにして外に突出された。餘《あまり》の事と學生は振返ツた……其の鼻《は
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