符、1−8−77] この土煙のなかを引きずり廻わされて、ぼろい儲にありつくのは君一人さね、あ、は、は、………………」
 隊長は眼のなかへ飛び込んで来る土煙を、ハンカチで払いのけながら、濶達に笑った。
「これは御冗談で……ぴっしりと経費を切り詰められていますので、なかなか儲けどころの騒ぎではありませんよ。隊長!」
「あ、は、はッ。ままいい。君たちの商売は儲けと奉公が一致するんだからね」
「いやあ、これは一本まいりましたね」
 高村は関羽鬚を揺すって、高笑した。「どうです。一口ウォツカでも…………」
 彼は乗馬ズボンの腰を叩いて、隊長の気を引いた。
「うむ。忍ばしているのか。よし行こう」

        二

 明けても暮れても単調な、だだっぴろい眼を遮切るもののない曠野である。何日間歩きつづけても、それは出発の時と少しも変りのない、雲と密着した青い地平線が意地悪く、その行手に弧線を描いていた。
 隊長は退屈で堪まらなかった。聞えるものは終日、油のきれた輜重車の軋みと、ひき馬の鉄蹄と、鞭と、兵卒の怒号と、苦力の怒罵とであった。それが更に濛々と立ち罩め、吹き靡《なび》く土煙の汚なさに云いよ
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