た。「軍人はだ。昔しから野暮なもんと相場がきまっとる。徹底するところまで聞かんことには」
「お気に召しましたか?」
ふいに隊長は濶達に、日焦けのした顔を半分口にして笑いたてた。
「あ、は、は、はッ」
チリ箒のような口髯が、口唇の左右一杯にのびて、それが青空に勇ましく逆立った。
乗馬が、ぽかぽかと土煙をあげた。――
空の青い、広漠たる曠野だった。が、もう何処かに秋の気が動いていて、夏草の青い繁みに凋落の衰えが覗われる。白い雲の浮游する平原のはてには、丘陵の起伏がゆるやかなスカイラインを、かっきりと描き出して、土ほこりの強い路が無限の長さと単調さで、青草の茫寞たるはてにまぎれ込んでいた。
乗馬は馬首をならべて、黙々とその蹄鉄のひびきに、岱赭《たいしゃ》色の土煙をぽかぽかと蹴たてながら忍耐強い歩みを続けていた。
またしても隊長が、日焦けのした赭黒《あかぐろ》い顔をこちらにむけて、高村に呼びかけた。
「おい、高村! まだ他に面白い話はないか?」
「はッ」
彼は当惑そうに顔をあげて隊長を見た。
「こう毎日毎日、単調な原ッぱを、女気なしに汗臭い輜重車《しちょうしゃ》を引きずり廻して暮
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