ut lux se ipsam et tenebras manifestat, sic veritas norma sui et falsi est.)。第二に、かくてこの見方は人間の存在についての一定の解釋をそのうちに含んでゐる。人間と眞理であるところの存在との間には存在的に相等の關係がある。そこでギリシア人は眞に存在するものと人間の本質的な活動とを共にロゴスといふ語をもつて表はした。キリスト教的哲學の根本前提も、被造的存在(ens creatum)としての人間が神の像と相等に從つて(ad imaginem et similitudinem)造られてゐるといふことであつた。もとより人間と神とは同一ではない。プラトンにおいても人間は全智のものと無智のものとの間の中間者(metaxu)と看做された。デカルトもスコラ哲學に從つて人間を神と無との間の、即ち最高存在と非存在との間の中間者(medium inter Deum et nihil, sive inter summum ens et non ens)と考へてゐる。かやうな存在即ちそのうちに非存在を含む存在である故に、誤謬も人間に屬する
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