ちはたいてい一緒に加茂の森を抜けて学校へ通った。
 大学時代に読んだもので最も大きな影響を受けたのはいうまでもなく西田幾多郎先生の著作である。ちょうど私の入学した年の秋『自覚における直観と反省』が本になって出た。続いて先生は『哲学研究』誌上に多くの論文を発表してゆかれた。私は先生の書かれたものを読むと共に、その中に引用されている本をできるだけ自分で読んでみるという勉強の仕方をとった。あの時分の先生の論文の中には実にいろいろの書物が出てくるのであるが、私の哲学勉強もおのずから多方面にわたった。先生は種々の哲学を紹介されたが、ひとたび先生の手で紹介されると、どの本もみな面白そうに思われ、読んでみたい気持を起させた。かようにして私は、カントからヘーゲルに至るドイツ古典哲学を初め、バーデン学派やマールブルク学派の新カント哲学、マイノングの対象論、ブレンターノの心理学、ロッツェの論理学、等々、いろいろのものを読んでみることに心がけた。アウグスティヌスやライプニッツの名も挙げておきたい。何を最も多く読んだかときかれるなら、私は二年生の時のリポートにライプニッツについて書き、卒業論文は『批判哲学と歴
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