々の一つの行爲は他の行爲に對して外部にあるものの如く獨立でなければならぬ。習慣を單に連續的なものと考へることは誤である。非連續的なものが同時に連續的であり、連續的なものが同時に非連續的であるところに習慣は生ずる。つまり習慣は生命の法則を現はしてゐる。
習慣と同じく流行も生命の一つの形式である。生命は形成作用であり、模倣は形成作用にとつて一つの根本的な方法である。生命が形成作用(ビルドゥング)であるといふことは、それが教育(ビルドゥング)であることを意味してゐる。教育に對する模倣の意義については古來しばしば語られてゐる。その際、習慣が一つの模倣であることを考へると共に、流行がまた模倣としていかに大きな教育的價値をもつてゐるかについて考へることが大切である。
流行が環境から規定されるやうに、習慣も環境から規定されてゐる。習慣は主體の環境に對する作業的適應として生ずる。ただ、流行においては主體は環境に對してより多く受動的であるのに反して、習慣においてはより多く能動的である。習慣のこの力は形の力である。しかし流行が習慣を破り得るといふことは、その習慣の形が主體と環境との關係から生じた辯證法
前へ
次へ
全146ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三木 清 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング