る。このノートは、「旅について」の一篇を除き、昭和十三年六月以來『文學界』に掲載されてきたものである。もちろんこれで終るべき性質のものでなく、ただ出版者の希望に從つて今までの分を一册に纏めたといふに過ぎない。この機會に私は『文學界』の以前の及び現在の編輯者、式場俊三、内田克己、庄野誠一の三君に特に謝意を表しなければならぬ。一つの本が出來るについて編輯者の努力のいかに大きく、それがいはば著者と編輯者との共同製作であるといつた事情は、多くの讀者にはまだそれほど理解されてゐないのではないかと思ふ。編輯者の仕事の文化的意義がもつと一般に認識され、それにふさはしい尊敬の拂はれることが望ましいのである。
 附録とした「個性について」(一九二〇年五月)といふ一篇は、大學卒業の直前『哲學研究』に掲載したものであつて、私が公の機關に物を發表した最初である。二十年前に書かれたこの幼稚な小論を自分の思ひ出のためにここに収録するといふ我儘も、本書の如き性質のものにおいては許されることであらうか。
  昭和十六(一九四一)年六月二日
[#地から2字上げ]三木 清



底本:「三木清全集 第一巻」岩波書店
   1966(昭和41)年10月17日発行
初出:「文学界」(下記以外)
   1938(昭和13)年6月〜1941(昭和16)年10月
   「哲學研究」(「個性について」)
   1920(大正9)年5月
   「人生論ノート」創元社(「後記」)
   1941(昭和16)年8月発行
   不詳(「旅について」)
※「「褒」の「保」に代えて「丑」」は「デザイン差」と見て「衰」で入力しました。
入力:石井彰文
校正:川山隆
2008年1月26日作成
2009年9月1日修正
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