[テにとつて弁証法的矛盾を意味するのではない。却て両者の関係を支配するのは第三の根源語、エロス(愛)であつた。然しながら道は困難である。世界の運命が偶然である限り愛の力は自由であらう。それが必然として自己の力を現はすとき、愛もまた必然に縛られねばならない。このとき愛もまた一の運命である。かくの如き全運命から解放されるためにエロスにはエルピス(希望)が結び付かねばならない。希望によつて存在は完成に到達し得る、とゲーテは考へた。
[#ここから2字下げ]
Eng ist das Leben fuhrwahr,
aber die Hoffnung ist weit.
[#ここで字下げ終わり]
[#地付き](『ゲーテ研究』岩波書店 昭和七年)



底本:「新版 ゲーテ読本」潮出版社
   1999(平成11)年6月5日初版発行
底本の親本:「ゲーテ研究」岩波書店
   1932(昭和7)年発行
※底本は「新字旧仮名」ですがルビは「新仮名」と思われますので、ルビの拗音・促音は小書きにしました。
入力:文子
校正:小林繁雄
2006年5月3日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネ
前へ 次へ
全62ページ中61ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三木 清 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング